この夏、こじかとぱんだと3人で、一泊の小さな旅に出かけました。
ホテルでも旅館でもなく、今回はちょっとだけアウトドア。
自然の中にある小さな宿泊施設に泊まって、
いつもとは少し違う夜を過ごしてきました。
行く前は、実はちょっと心配していました。
普段はゲームやテレビが大好きな子どもたち。
「せっかく来たんだから、ゲームはほどほどにしてほしいな」なんて思っていたんです。
夜、いったい何をして過ごすんだろう。
暇になって、「もう帰りたい」なんて言われたりしないかな。
そんなことも少し考えていました。
ところが。
今回の旅、こじかもぱんだもゲームを一度もしませんでした。
私が、「ゲームやめなさーい」と言ったわけでもありません。
気づけばゲームをする暇もなく、食べて、散歩して、話して、笑って。
コオロギに大騒ぎして。
笑いつもとは違う場所で、いつもとは違う時間を過ごしているだけで、ゲームがなくても十分楽しかったみたいです。
行く前に心配していたことのひとつは、あっさりなくなりました。
そして終わってみれば、こじかとぱんだから何度も、「楽しかったー!」という言葉を聞くことができました。
それが、本当に嬉しかった。
食べて。
笑って。
怖がって。
知らない人に助けてもらって。
そして最後には、私は泣きました。
いろんな気持ちが詰まった、忘れられない一泊になりました。
とにかく、よく食べた今回の旅。
振り返って最初に思うのは、私たち、ずっと食べてたな。
ということ。笑
まずは、ご当地っぽいソフトクリーム。
お昼にはラーメンを食べました。
ぱんだは初めて食べるそのラーメンが、かなり気に入ったようで。
まさかの、「替え玉する!」7歳、絶好調。
初めてなのに替え玉までいくとは思わなかった。笑
そのあともチョコを買って少し食べ、今度は自販機でアイスを見つけて食べ。
宿へ向かう途中ではスーパーに寄りました。
「これもいる!」
「これ食べたい!」
と、みんなで好きなものをカゴへ。
お菓子にパンにお惣菜。
完全に買いすぎました。
でも旅先のスーパーって、どうしてあんなに楽しいんでしょう。
普段なら、
「いや、それ家にあるやん」とか、
「そんなに食べんやろ」となるのに、
旅行中は、「まぁ、いっか!」となる不思議。笑
翌朝は、持って行ったホットサンドメーカーで朝ごはん。
帰り道にも甘いものを食べて、さらにポテトまで。
家に帰ってからも、残っていたパンやお菓子をちょこちょこ食べて。
最終的には、「もう何も入らん」というくらいお腹いっぱいになりました。
……食べすぎです。
でも、それも含めて楽しかった。
コオロギから姉を守る弟
宿では、ちょっとした事件もありました。
部屋の中に、コオロギが一匹迷い込んできたんです。それを見たこじか。
「ギャーーー!!」
全力で逃げる。
するとぱんだが、ほうきを持って登場。
コオロギを叩くわけでもなく、そっと外へ出してくれました。
普段は姉弟で言い合っていることも多いのに、こういうときは弟、頼もしい。
本人はたぶん、「姉を守った!」なんて思っていないんでしょうけどね。
大騒ぎするこじかと、淡々とコオロギを外へ出すぱんだ。
その対比がおかしくて、なんだかかわいくて。
旅先だからこそ覚えている、小さな思い出になりました。
鍾乳洞を完全になめていた
そして今回、人生で初めて鍾乳洞にも入りました。
私の中の鍾乳洞って、もっとこう……
観光地としてきれいに整備されていて、
広いところをゆっくり歩きながら、
「わぁ、きれい」なんて見る場所だと思っていたんです。
違いました。
狭い。
暗い。
そして、思った以上に奥まで続いている。
私、ほんの少し閉所が苦手です。
最初は大丈夫だったものの、進んでいくうちに、だんだん嫌になってきました。
先頭を歩くこじかに、「ねぇ、もう帰ろうよー」と弱音を吐く母。
しかしこじか、ほぼ無言で進んでいく。
強い。
私は後ろから、
「分かった、分かったから!せめてゆっくり行って!」
とお願いしながらついていきました。
完全に、どっちが子どもなのか分かりません。
知らない親子に助けてもらった
しばらく進んだところで、奥のほうから人の声が聞こえてきました。
少し広くなっている場所で待っていると、
今度は後ろから、親子らしき男性2人がやってきました。
「奥から人の声がするから、ここで待ってたんです」
と話すと、「大丈夫でしょう」という感じで、そのまま先へ進んでいく2人。
その瞬間、私は思いました。
この人たちについて行こう。
ものすごく自然に便乗しました。笑
でも、その親子が本当に優しかったんです。
私たちがちゃんとついて来られているか確認しながら、ゆっくり進んでくれて。
暗いところでは、明かりを照らしてくれて。
奥まで一緒に行って、帰りも出口まで、私たちのことを気にしながら歩いてくれました。
何か特別なことを言うわけでもなく、
「助けてあげています」という感じでもなく。
ただ、ごく自然に。
それが余計にかっこよかった。
あの親子がいなかったら、私はきっと途中で引き返していました。
そうしたら、こじかとぱんだも最後まで行けなかったかもしれません。
2人に、「怖かったけど、最後まで行けた」という達成感を味わわせてあげられたのは、あの親子のおかげです。
もう会うことはないかもしれないけれど、
本当にありがとうございました。
旅先で知らない人の優しさに触れると、ずっと覚えていたくなります。
そして、この日もうひとつ学んだこと。
私はたぶん、もう鍾乳洞には行きません。
一回で十分です。笑
完全になめていました。
「それにしても、ママの声きれい〜♡」
旅の途中、寝起きの私に、ぱんだが突然言いました。
「それにしても、ママの声きれい〜♡」
それにしてもって何。笑
しかも寝起き。
私自身は、「今日ちょっと声ガラガラやな」と思っていたくらいなのに。
そんな声を、ぱんだは「きれい」と言ってくれました。
子どもって時々、
なんでもない顔をして、
ものすごく嬉しいことを言います。
ぱんだにとっては、その場で思ったことを言っただけなのかもしれません。
でも私は、こういう何気ない一言を、ずっと覚えていたい。
写真には残らないけれど、私にとっては大切な旅の思い出です。
ゲームを一度もしなかったのに、「楽しかった!」
そして今回の旅で、私が何より嬉しかったこと。
それは、こじかとぱんだが何度も、「楽しかったー!」と言ってくれたことでした。
一度だけじゃなくて、何度も。
旅の途中でも、帰り道でも、旅が終わってからも。
「楽しかったね」「また行きたいね」
そんなふうに話してくれました。
しかも今回、あれだけ普段ゲームが好きな2人が、ゲームを一度もしなかった。
それでも、何度も「楽しかった」と言ってくれた。
そのことが、私はすごく嬉しかったんです。
今回の旅は、私が決めて、私が準備して、子どもたちを連れて行った旅でした。
ちゃんと楽しんでくれるかな。
退屈しないかな。
そんな心配もありました。
だから2人から、「楽しかったー!」と聞くたびに、心の中で何度も、あぁ、来てよかった。
と思いました。
私の心の中には、ずっと寂しさがあります。
楽しい時間を過ごしていても、ふと夫を思い出して、胸がぎゅっとなる瞬間があります。
それでも、こじかとぱんだが楽しそうにしている姿を見ると、嬉しい。
「楽しかった」と言ってくれると、もっと嬉しい。
私が寂しくないことと、子どもたちに楽しい思い出ができることは、別なんだと思います。
寂しさを抱えたままでも、一緒に笑うことはできる。
楽しい思い出を作ることもできる。
そして時には、子どもたちの笑顔や言葉に、
私のほうが救われることもある。
今回の旅で何度も聞けた、
「楽しかったー!」その言葉は、心が寂しくなっていた私にとって、本当に本当に嬉しいものでした。
楽しかった旅が、終わっていく朝
今回の旅は、本当に楽しかった。
こじかとぱんだからも何度も、「楽しかったー!」と言ってもらえて。
それが本当に嬉しくて、「あぁ、来てよかったな」と思っていました。
でも次の日の朝。
帰るために荷物をまとめ始めた頃から、少しずつ、心が寂しくなっていきました。
楽しかった時間が終わるから寂しい。
それも、もちろんあったと思います。
でも、それだけじゃなくて。
この旅が、夫がいた頃のわが家なら、 きっとしなかったような旅だったこと。
夫がいたら、旅館に泊まって、夜ごはんも朝ごはんも用意してもらって、もう少しのんびりした旅行を選んでいたかもしれません。
そもそも、こんなふうにアウトドアっぽい場所へ泊まりに行くこと自体、なかったかもしれない。
3人になって、今までしなかったことをするようになりました。
新しい場所へ行って、新しいことを経験して、新しい楽しさも知りました。
それは、決して悪いことじゃない。
今回だって、本当に楽しかった。
でも。「新しいことができるようになった」と、「寂しくなくなった」は、全然違いました。
楽しいのに、寂しい。
楽しかったからこそ、余計に寂しくなることもある。
「夫がいたら、どうしてたかな」
「この旅に一緒に来ていたら、どんな顔してたかな」
そんなことを考えました。
3人の思い出が増えることは嬉しい。
でもそのたびに、4人ではないことも、同時に感じてしまいます。
3人で過ごした一泊が楽しかったからこそ、
「本当に3人になったんだな」
ということを、 どこかで強く感じてしまったのかもしれません。
涙が出そうになったけれど、
こじかとぱんだには気づかれたくなくて、
帰るまではずっと我慢しました。
いつも通り話して、
帰り道にも寄り道をして、
そのまま家まで帰りました。
そして家に着いた途端、我慢していたものが全部ほどけたように、涙が溢れて止まらなくなりました。
初めて、お義母さんに甘えた
帰宅して、気持ちがどうにもならなくなって。
私はお義母さんのところへ行きました。
そして、初めて、子どもみたいに泣きつきました。
今まで、お義母さんの前で涙を見せたことはあっても、あんなふうに、「甘える」ように泣いたのは初めてでした。
お義母さんは、「よしよし」と私を受け止めてくれました。
そのとき、不思議なくらい、お義母さんとの距離が少し近くなったように感じました。
そして、この人は、夫がいなくなった今も、私に幸せでいてほしいと思ってくれているんだ。
そんな気持ちが伝わってきました。
それが、とても嬉しかった。
大人になっても、誰かに甘えたい日がある。
「よしよし」としてもらいたい日がある。
あの日は、そんな日だったんだと思います。
4人の思い出も、3人の思い出も夫がいなくなってから、私たちの暮らしは大きく変わりました。
今までとは違うことをするたびに、「夫がいたらどうしてたかな」と考えます。
きっと、これからも何度もそう思うんだと思います。
でも。
3人の新しい思い出が増えたからといって、4人だった時間が消えるわけじゃない。
今の3人で笑うことが、夫を置いていくことになるわけでもない。
4人だった頃の思い出を大切にしながら、今の3人でも、楽しいことを見つけていけばいい。
まだ、心からそう思える日ばかりではないけれど。
今回の旅で、少しだけそんなことを思いました。
ゲームを一度もしないで、食べて、笑って、散歩して。
コオロギに騒いで、鍾乳洞で怖がって、知らない人の優しさに助けられて。
そして、こじかとぱんだから何度も、
「楽しかったー!」
と聞くことができた。
帰ってきてからは、たくさん泣きました。
楽しかった。嬉しかった。それでも、寂しかった。
どれかひとつだけが本当なんじゃなくて、全部が、今の私の本当の気持ちなんだと思います。
きっと忘れない、3人で過ごした夏の一泊旅行。
また、3人でどこかへ行こう。
ゲームをする暇もないくらい、楽しいところへ。
ただし今度は、鍾乳洞以外で。笑
今日も、ゆっくり。私たちのペースで。

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