
この間、ぱんだと2人でショッピングモールに行きました。
サーティワンでアイスを食べて、ゲームを1回して、少し買い物をして。
ゲームが終わると、ぱんだは「もう1回!」とは言わず、すんなりおしまい。
アイスも座ってゆっくり食べて、満足したら、「もぅ帰りたーい!」と言いました。
その姿を見ながら、私はふと、昔のぱんだのことを思い出しました。
昔は、ショッピングモールに行くのが苦痛だった小さい頃のぱんだは、本当にじっとしていることができませんでした。
目に入ったもの、気になったものがあれば、すぐにそちらへ行って触って確かめる。
気が済むまで見て回らないと、癇癪を起こしてしまう。
疲れれば疲れるほど癇癪はひどくなり、周りを見ずに走るので、ほかのお客さんにぶつかって、私はいつも、ぱんだを追いかけながら周りに謝り、危険がないか気を張っていました。
買い物が終わる頃には、毎回クタクタ。
そんな日は、もう夕飯なんて作る気力も残っていません。
それでも当時の私は、帰ってから頑張って夕飯を作っていました。
よくやっていたなぁと思います。
危ない場所から離れさせるために、ぱんだを抱きかかえて連れて行こうとすると、嫌がって暴れることもありました。
言葉に出来ない、理解してもらえない事が悔しくて、噛んでしまうことも、何度もありました。
当時の私は、冷静に対応することができませんでした。
どうすればいいのかも、分かりませんでした。
危ないから止めなければいけない。
ここから連れて行かなければいけない。
ただただ、力ずくで連れ戻すことしかできず、私は心も体も疲れ果てていました。
本当なら楽しいはずの家族でのお出かけ。
でも、私にとってショッピングモールは、楽しい場所ではありませんでした。
行く前から気が重く、行けば必ず疲れ果てる。
だから、だんだん行かなくなりました。
「まずは訓練をしてください」
そんな頃、特別支援学校に勤めている、地域ではとても有名な先生に相談できる機会がありました。
ショッピングモールでのぱんだの様子を話すと、先生は、「まずは訓練をしてください」と教えてくださいました。
ぱんだを連れてショッピングモールへ行く日は、大人がしたい買い物は我慢する。
ほかの用事は入れず、ぱんだの練習だけのために行く。
事前にショッピングモールの地図を見せて、本人に行きたい場所を2か所決めてもらう。
どの道を通るのかも決め、そのルートの通りに動く。
途中で気になる場所があっても、その日は絶対に寄らない。
決めた2か所へ行けたら、その日の練習は終わり。
それを何度か繰り返し、できるようになってきたら、
「今日はお母さんも一つ行きたい場所があるよ」と、新しい予定を一つ加えてみる。
それもできたら、また少しだけ経験を増やしていく。
最初から長時間のお買い物を成功させようとするのではなく、成功できる予定を作り、少しずつ経験を重ねていく。
たくさん経験をさせること。
そして、その経験を成功体験につなげていくこと。
今思い返すと、本当にその通りだったと思います。
正しい方法を知っても、できない時もある
ただ、当時の私には、その練習を繰り返す余裕がありませんでした。
コロナ禍だったこともあり、外出自体が難しい時期でもありました。
毎日の生活を回すだけで精いっぱい。
練習のためだけにショッピングモールへ連れて行き、予定通りに動き、癇癪にも対応する。
それを何度も繰り返す力は、当時の私には残っていませんでした。
正しい方法を教えてもらっても、すぐに実践できるとは限りません。
分かっているのにできない。
やったほうがいいのに動けない。
そんな自分を、責めてしまうこともありました。
でも今は思います。
あの頃の私は、できることを何もしていなかったわけではありません。
毎日ぱんだを守って、追いかけて、抱きかかえて、謝って、疲れ果てても家に連れて帰っていました。
生きて、育てて、毎日を終わらせていました。
それだけでも、十分頑張っていたんだと思います。
積み重ねは、見えないところで続いていた家では十分にできなかった練習を、放課後等デイサービスでたくさん経験させてもらいました。
みんなと一緒に出かけること。
説明を聞くこと。
順番を待つこと。
決められた時間で終わること。
行きたい場所があっても、今は行けないと知ること。
そして、約束を守れた経験を何度も積み重ねること。
その一つひとつが、ぱんだの中に少しずつ積み上がっていたのだと思います。
成長は毎日見ていると、なかなか気づきません。
できなかったことが、ある日突然できるようになったように見えることもあります。
でも本当は、突然ではありません。
本人が何度も経験して、失敗して、周りに助けてもらって、少しずつ覚えてきた結果なんですよね。
あんなに大変だった場所で、一緒に笑っていたこの間のショッピングモールでは、ぱんだを抑え込む必要も、必死に止める必要もありませんでした。
ゲームは1回でおしまい。
アイスを食べて満足。
自分から「もう帰りたい」と言う。
私は周りに謝り続けることもなく、ぱんだを追いかけ回すこともなく、隣で一緒に笑っていました。
昔は、あんなに大変だったショッピングモール。
行くことを避けるほど、私にとっては苦しい場所でした。
その同じ場所で、今はぱんだとの時間を楽しむことができていました。
「もう1回!」と言われないことに驚きながら、あんなに困っていた「もう1回!」を、少し懐かしく感じました。
あの頃は、この大変な毎日がずっと続くような気がしていました。
いつになったら落ち着くんだろう。
どうしてうちの子だけできないんだろう。
私の育て方が悪いのかな。
そんなことを何度も考えました。
でも、ずっと同じではありませんでした。
ぱんだは、ちゃんと成長していました。
ゆっくり、ゆっくり。
私には見えないところでも、前に進んでいました。
今、悩んでいるお母さんへ
今、子どもとのお出かけがつらいお母さん。
周りの視線が怖くて、外に出ることを諦めているお母さん。
楽しいはずの家族の時間を苦痛に感じてしまい、自分を責めているお母さん。
無理に出かけなくてもいいと思います。
今は避けることも、立派な方法の一つです。
できる時に、できる範囲で。
短い時間でも、予定が一つだけでもいい。
そして、練習させる余裕がない時は、今日一日を無事に終わらせるだけでも十分です。
親がすべてを一人で背負わなくてもいい。
学校や放課後等デイサービス、支援してくれる方の力を借りながら、子どもは少しずつ経験を重ねていきます。
すぐには変わらないかもしれません。
昨日できたことが、今日はできない日もあります。
それでも、経験したことはきっと、子どもの中に残っています。
いつか、「あの頃は大変だったなぁ」と、少しだけ懐かしく思える日が来るかもしれません。
私も当時は、そんな日が来るなんて思っていませんでした。
「もう1回!」が懐かしくなる日が来るなんて。
あの頃の私に、そっと教えてあげたいです。
ぱんだは、ちゃんと成長しているよ。
お母さんも、十分頑張っているよ。
今日できなかったことよりも、今日を一緒に終えられたことを大切にしていいんだよ、と。



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